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2023年6月21日

江戸清ブランドの真髄 ── 高橋伸昌会長が語る安心と安全の価値

ブランドとはお客様との約束であり、安心と安全なものが提供されているかを表すものです。株式会社江戸清の代表取締役会長である高橋伸昌氏が、江戸清ブランドの真髄について語りました。美味しさだけでなく、安全性と心の安心感を重視した「もの作り」を目指す姿勢について、インタビューしました。

── 金沢区に本社工場ができた経緯 ──

元々、我々は南区の井戸ヶ谷に工場を構えていました。この場所は駅にも近く、ますます住宅地が広がっていったんですよ。しかも、トラックの出入りも頻繁で、地域の人を悩ませることも増えてきたんです。同時に、事業も拡大してきたため、2002年に工場を移転することにしました。

実は、幸浦の本社工場は元々倉庫会社が所有していた建物だったんですよ。だから、建物自体は頑丈で、更に食品工場であったこともあり冷凍冷蔵庫も完備されていました。この工場の一番の利点は、近くに水道処理施設があることです。つまり、大規模な災害が発生した場合でも、ライフラインが保たれるというわけです。また倉庫会社の建物だけあって、しっかりとした構造を持っています。工場が稼働すれば、災害時でも動き続けることができるのは、この建物の強みなんですね。

── 江戸清の本社工場ブタまんの看板の秘話 ─

江戸清の本社工場の壁面、看板デザインについてですね。実は、私がそのデザインを手がけました。

本社工場の看板は、誰が見てもすぐに分かるようなものにしたかったんです。龍がお饅頭を2つ持っているイメージで、1つは江戸清のお饅頭を表しています。そしてもう1つは、かつて私が経営していた飲食店であるりーろんのお饅頭なんです。りーろんは以前、東京の一角にある飲茶専門店として営業していました。最初の2年間で黒字にすることができたのですが、3年目にやむなく売却することになりました。自分のお客さんがお店に来るときは、私がお店に出向き直接お客様に感謝の気持ちを伝えたかったんです。ただ、その経営形態だと私は東京と横浜の往復で、深夜まで働いて、朝からまた仕事という生活スタイルが続き、体調を崩してしまう可能性があったため、お店を売却することにしました。そのまま看板には2つのお饅頭を持った龍のデザインにしています。

── 江戸清ブランドとは ──

ブランドっていうのはお客様との約束なんですよ。安心安全なものが作られてるかということです。例えば味の素の商品を食べるとき、誰も心配しないと思います。でも逆に、全く知らない安い商品は心配ですよね。「ほんと、平気なの?」「どんな管理をしているの?」と疑問に思うものです。これがブランドの価値なんです。

もの作りというのは、美味しいものを作ることだけではなく、安全性も非常に重要な要素です。それに加えて、心から安心できるかどうかも大切なのです。心の問題というのは、一度クレームを起こした会社に対して「あの会社は平気なのかな?」と疑念を抱くこともあります。たとえ基準を満たしていても、心の問題があると消費者は買わないこともあります。

ですから、先ほど言ったように安全と安心を満たすブランドになることが大切であり、それはお客様との約束です。私たちはそうした価値を持つもの作りを目指しています。

── 江戸清のブランド展開戦略 ──

私たちはナショナルブランド(NB)の拡大に力を入れています。現在、中華街で販売している商品(中華饅頭)は1個600円という価格帯です。これは一般の方々が日常的に購入する価格ではありません。そのため、これを単純に外に持ち出して販売してもなかなか売れるものではありません。私たちが想定しているのは、中華街に訪れた際に食べたいと思ったり、お土産として持ち帰りたいと思ったりするシチュエーションで、それに合わせて商品を提供しているのです。しかし、もっと多くの方々に手に取っていただきやすく、江戸清の魅力を感じていただくために、NB商品の展開を行っています。例えば、百貨店やスーパーマーケットなど様々な場所で江戸清の名前でNB商品が販売されています。ですから、お客様がいつでも手に取っていただける接点を広げていくことが私たちの目標です。

──株式会社江戸清代表取締役会長   高橋 伸昌の挑戦と苦労とは ──

挑戦か。もう、あまりにも多すぎて、分からないんだよね。(笑)自分が社長になったのは、2000年。その数年後に「狂牛病」として知られる「BSE」という病気が発生しました。牛がテレビ画面でガクッと倒れる映像が流れたのを鮮明に覚えています。それまでは、家畜の疾病の問題はほとんどありませんでしたので、この事態には非常に困惑しましたね。

その後も、「狂牛病」や「口蹄疫」、「鳥インフルエンザ」といった食肉に関連する問題が頻繁に発生しました。更に、「中国の毒餃子問題」や「段ボール肉まん問題」など、食品にまつわる問題が起きました。こうした問題が発生するたびに、売り上げに大きな変動が生じます。例えば、「狂牛病」が発生すると、牛の売り上げは急激に減少しますが、その代わりに豚や鶏の売り上げが増えるのです。ここで重要なのは、豚や鶏の商品開発を適切に行い、需要に応じることです。もし豚に問題が発生した場合、鶏の需要が高まり、また牛の売り上げも少しずつ回復するかもしれません。このため、鶏の市場をしっかりと押さえ、原材料の調達から製品開発まで、常に戦闘態勢を整えておかなければなりませんでした。「段ボール肉まん問題」が発生した際は、売り上げが一時的に80%も減少しました。これは風評被害の一例ですね。後になって、その肉まんは段ボールで作られたというのは嘘だと判明しました。メディアの取り扱いによって、どの産業でも同様に、人々の心理は大きく揺れ動くのです。食品に関連する不祥事や事故、そして家畜の疾病問題により、企業は常に左右されるのです。それを安定的にするためには、どのような対策を講じるべきか、それが一番難しい課題です。

牛が苦境に立たされる場合、豚や鶏の商品構成を見直し、組み替えて企業の存続を図る必要があります。たとえば、もし豚まんが「段ボール肉まん問題」の影響で一時的に売り上げが80%も減少するのであれば、他の部門でその減少分を吸収する必要があります。

これらの体制作りは苦労の連続でした。

そして、やって来たのがコロナです。感染症の影響で、牛、豚、鶏といった全ての部門が打撃を受けました。以前の問題とは異なり、今回は市場全体の縮小や消費の低迷といった深刻な状況に直面しました。まるで関東大震災や横浜大空襲のように、街が一つなくなるような状況で、企業は容易に消え去ってしまう世界です。

この影響を最初に受けたのは3月ごろであり、その時点で私は社長から会長となり、新しい社長が就任していました。その際に私は彼に対して、「この会社をどのような形で進めたいのか」と尋ねました。彼は現状のまま残したいとの意向を示しましたが、私は「経営とは時代に対応する技術」であり、緊急の状況に直面した場合には会社の根本的な見直しを行う必要があると伝えました。

私は彼に10の課題を与え、翌年の4月までにそれらを達成するよう指示しました。彼は全ての課題を達成しました。その結果、江戸清の存続の道が切り開かれたのです。

そして、コロナを乗り越えたことで、江戸清としての力が大幅に向上しました。コロナの影響で従業員を削減せざるを得ない状況に陥りましたが、驚くべきことに、一人一人が自分自身の能力を最大限に引き出すことができることが分かりました。以前は彼らの力は30程度だと思っていましたが、実際には60や70の力を持っていたのです。